CCI FRANCE JAPON

税制・法律講座:フランスにおける会社の実質的な受益者の申告制度について

連載「税制・法律講座」は、会員企業の専門家が税制・法律に関するテーマについて解説します。 今回の連載「税制・法律講座」は、TMI総合法律事務所のデヴィ・ル ドゥサール氏(パリ弁護士会所属、東京弁護士会外国法事務弁護士登録)と千田 多美氏(パリ弁護士会登録、現在フランス のアルタナ法律事務所に出向中)、およびアルタナ法律事務所パスカル・マージュ氏(パリ弁護士会登録)による「フランスにおける会社の実質的な受益者の申告制度」についての寄稿記事です。

TMI

連載・特集, パリの知的財産  | 

会社の実質的な受益者の申告制度

マネーロンダリング・テロ資金供与防止に関する欧州指令[1]を国内法制化した2016年12月1日のオルドナンス2016-1635号により、フランスに於いて登記された或いはこれから登記される会社や拠点(établissement)の「実質的な受益者」(自然人)の身元を確認し、かかる情報を管理・更新することが義務付けられました。

この制度は、上場会社以外のすべての会社が対象となります(フランスに子会社又は拠点を有する外国法人も対象となります[2])。これに伴い、当該会社は、「実質的な受益者」に関する情報を商事裁判所書記課に提出しなければなりません。


◇  「実質的な受益者」の定義

「実質的な受益者」の定義は、主に通貨金融法典R. 561-1条に以下のとおり定められています。

a) 資本又は議決権の25%以上を直接又は間接的に保有している自然人
b) 会社の経営機関、取締役会や株主総会を実質的に支配できる自然人

上記受益者のリストにより、実質的な支配者である自然人を特定することを目的としています。

ただし、「実質的な受益者」のより具体的な特定の方法については、近く公布されるデクレ(政令)により明確化される予定です。

◇  申告する情報

「実質的な受益者」について、以下の情報を申告するものと定められています。

a) 氏名、使用名、仮名、出生日及び出生地、国籍、住所
b) 当該会社又は法人の支配の条件
c) 自然人が当該会社又は法人の受益者になった日付

◇  申告書提出の時期

既に登記されている会社や拠点の場合、201841日までに受益者申告を行う義務があります。

新しく登記する会社や拠点の場合、設立登記を行う際もしくは登記書類の提出受領証の公布から15日以内に提出しなければなりません。

なお、上記のいずれの場合も、申告を行なった後に「実質的な受益者」が変更になった場合は、その原因行為の日から30日以内に変更の申告を行なう必要があります。

◇  罰則

「実質的な受益者」の申告を行わなかった場合もしくは間違った情報又は不足した情報を申告した場合、通貨金融法典L.561-49条により、 6ヶ月以下の禁錮刑及び7,500ユーロ以下の罰金が定められています(法人の場合は37,500ユーロ以下)。補充刑として、経営禁止の制裁を受ける可能性もあります。

また、罰金強制(履行の遅延に応じて科される罰金)により申告が強制される可能性もあり、その場合には、上記の刑罰に加えてかかる罰金が科される可能性があります。

◇  「実質的な受益者」に関する情報の開示

受益者申告書の情報は、原則として通貨金融法典L.561-46条及びR.561-57条に明記されている限定された者・機関等(金融機関、裁判官、弁護士会会長、警察、関税局、税務局、金融商品取引局等)にのみ開示されます。

◇  商事裁判所書記課における受益者申告費用

商事裁判所書記課への受益者申告書の提出にあたり、下記の書記課費用がかかります。

◇  実務上のアドバイス

上述のとおり、「実質的な受益者」の定義については今後公布される予定のデクレにより明確化されることが期待されますが、現時点では、フランスに子会社や拠点を有する日本企業は、株主の構成に関する情報を確認し「実質的な受益者」を特定する準備を行なうことをお勧めします。この点につきましては、フランスにおける会社や拠点の名義でフランスの銀行口座を開設する際提出する書類のなかに、実質的な受益者に関する情報を含んだ書類がありますので、口座開設の際に使用された書類が最近のものであれば、今回新たに義務付けられました、上記「受益者申告書」提出の際の参考になり得ます。


[1] Directive (EU) 2015/849 of 20 May 2015 on the prevention of the use of the financial system for the purposes of money laundering or terrorist financing,

[2] 注:現時点では、パリの商事裁判所書記課のサイトにおいて、フランスに拠点を設立する外国法人に関して「実質的な受益者」に関する書類は登記の必要書類として要求されていません。公布予定のデクレによってこの点が変更される可能性もあります。