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税制・法律講座:フランス‐コンプライアンス:内部通報体制の確立に向けて

連載「税制・法律講座」は、会員企業の専門家が税制・法律に関するテーマについて解説します。 今回の連載「税制・法律講座」は、TMI総合法律事務所のデヴィ・ル ドゥサール氏(パリ弁護士会所属、東京弁護士会外国法事務弁護士登録)と今野ブデン泰子氏による「フランス‐コンプライアンス:内部通報体制の確立に向けて」についての寄稿記事です。

Davy le Doussal et Yasuko Kono

連載・特集  | 

2006年6月6日に成立した「金融商品取引法」(J-sox法)の成立に伴い、日本の上場企業は、フランス子会社にホットラインなどを設置し、内部通報体制の整備を進めてきました。

一方、フランスでは、「透明性、腐敗の防止並びに経済生活の近代化に関する 2016 年 12 月 9 日付法律(通称「サパン第2法」)」の成立に伴い、50人以上の従業員を有するフランス企業は、内部通報体制を整備することが義務付けられました。これにより、親会社の上場または非上場を問わず、日本企業の子会社のうち50人以上の従業員を有するフランス法人は、例外なく、内部通報制度を整えることが義務化されました。

内部通報制度の対象となる企業

内部通報体制の整備は、2018年1月1日から本格的に義務付けられ、サパン第2法第8条にもとづき、少なくとも50人の従業員を有する法人は、私法上の法人または公法上の法人を問わず、従業員などの内部者または外部協力者もしくは単なる外部者による通報体制を設けることになりました。

私法上の法人における50人の従業員の数え方は、企業委員会[1]の設置の要否を判断するときの基準と同じです。企業委員会は、過去3年間のうち12か月間(継続である必要はない)、少なくとも50人以上の従業員を雇用する企業に設置義務があります。

内部通報制度の特徴

サパン第2法の施行法として、2017年4月19日付で、内部通報制度に関するデクレが公布され、これにより、対象企業は、以下の項目について、具体的な方法を規定することを義務付けています:

1)       通報者が、自らの直接または間接の上司、または自らの雇用者、もしくは、当該雇用者によって指名された者に通報する方法

2)       通報者が、内部通報を裏付ける事実または情報あるいは書類(様式または形態を問わない)を保有している場合は、これら裏付資料を提出する方法

3)       通報者が、通報を受けた者と意見交換する機会を得た場合、その拠り所となった証拠などの提出方法

さらに、対象企業は、内部通報体制の導入にあたり、以下の項目についても、詳細な規定を定めることが義務付けています:

1)       通報者に対して、通報を受領した旨を速やかに通知し、当該通報の受理審査に要する期間を告げ、当該審査の結果、当該通報が受理されたか否かを通報者に通知する方法を明確にすること。

2)       通報者の身元、通報の目的となった事実および被通報者の身元が判明しない仕組みを確立すること。なお、通報事実の確認調査または処理のために、第三者の協力が必要となり、その者に当該事実を伝達する場合においても同様です。

3)       通報が不受理となった場合、通報者および被通報者の身元が判明する恐れのある資料の破棄、並びに、破棄までの期限(受理審査または調査が終了してから2か月を超えてはならない)。通報者および被通報者は、審査が終了した旨の通知を受けます。

内部通報体制に関する規定において、情報処理および自由に関する国家委員会(CNIL[2])の規則にもとづき、通報は自動処理の対象となる旨を明記しなければなりません。

内部通報制度プロセス

通報は、通報者の直接または間接の上司、雇用者または雇用者によって指名された者に対して行われます。「雇用者によって指名された者」とは、社外の者でもよく、その職位に応じて、かかる任務を実行するにふさわしい、能力、権限および手段を有している必要があります。なお、自然人でも法人でも構いません。

通報を受けた者が合理的な期間内に、通報を受理するか否かについて決定を下さなかった場合、当該通報は、司法機関、行政機関または専門団体に転送されます。当該機関または当該団体が3か月以内に処理しなかった場合、通報を公表することができます。重大かつ差し迫る危険性がある場合、あるいは取り返しのつかない損害が生じる危険性がある場合は、司法機関、行政機関または専門団体に直接通報することができます。通報を公表することもできます。

通報が不受理となった場合、通報を受けた者は、受領した情報にかかる一切の証拠および資料を、即刻、破棄しなければなりません。通報が受理された場合、通報を受けた者は、収集した事実を調査し、かかる調査が終了した日から2か月以内に、懲戒手続を行うか、または、裁判手続を開始するかの決定を通知し、雇用者によって指名された者に必要な情報を伝達します。

通報の収集に際しては、通報者の身元が外部に漏れない体制を築くことが重要です。通報者の身元を開示することは、司法機関に対する開示を除き、本人の同意がない限り、許されません。

通報に関する情報が漏洩した場合、2年間の懲役および3万ユーロの罰金を科すことができると定められています。

内部通報制度の公表

対象企業は、内部通報体制を備えている旨を通知し、掲示し、または、ウェブサイトを介して公表し、従業員、公務員または外部の協力者が察知できるようにしなければなりません。なお、電子メールなどの電磁的方式によって、内部通報体制が存在することを周知させることができます。

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日本企業の子会社で、すでに企業委員会[3]を設置しているものは、内部通報体制を整備する必要があります。その他の企業については、従業員数が50人を上回る際に整備する必要が生じます。


[1] 少なくとも50人の従業員を有する企業においては、雇用者は、従業員代表者および、場合によっては、当該企業の代表的組合から指名を受けた組合代表者から構成される企業委員会(CE)を設置する義務を負います。企業委員会は、経済分野および福利厚生分野において役割を果たし、物的・資金的手段を備えています。定期的に会合を開くことが義務付けられています。

[2] CNILは、2017年6月22日の審議において、サパン第2法に応じ、内部通報制度を規定する統一許可(AU-004)を修正しました。修正後の統一許可は、従前の規定を包括しており、よって、すでに手続を完了している組織については、今回の追加規定への準拠を除き、新たな手続を行う必要はありません。まだ手続を行っていない組織につては、CNILの規定を遵守する届出を提出するか、もしくは、個人情報の処理が統一許可を遵守していない場合は、特定許可の申請をすることができます。

[3] 労働法改正の一環として、2017年9月22日付のマクロン政権のオルドナンスにより、社会経済委員会(CSE)が創設されました。2020年1月1日以降、少なくとも11人の従業員を有する企業はすべて、社会経済委員会を設置することが義務となります。すなわち、企業委員会ではなく、社会経済委員会に一本化されることになります。